
不動産鑑定士の上銘です。賃料評価に特化した「地代・家賃の鑑定相談室」を運営しています。
「今の家賃が適正か分からない」「家賃を上げたいが、交渉がうまくいかない」—こういった地代・家賃の悩みで当事務所にご相談いただく際、私たちがまず最初に行うことがあります。
それは、「賃料差額」があるかどうか、そしてその賃料差額がなぜ生じているのかを調べることです。
賃料差額とは何か?
賃料差額とは、「現在の現行家賃(継続賃料)」と、「市場の相場やコストから算定される適正賃料(新規賃料)」との間に存在する価格のズレのことです。
この差額が大きければ大きいほど、賃料改定(増額または減額)の可能性が高まります。
しかし、この賃料差額は、単に「相場が高い/低い」という単純な理由だけで生まれるわけではありません。
私たちは、この賃料差額の背後にある複雑な要因を明確にすることで、説得力のある交渉材料を作り出します。
今回は、ご相談を受けたら私たちが真っ先に調べる、賃料評価の核となる5つのポイントを解説いたします。
賃料改定の根拠を導くための調査ポイント5選
1. 継続賃料と新規賃料の比較(賃料差額の特定)
私たちがまず調べるのは、現在の賃料が市場の新規賃料と比べてどれだけ乖離しているか、という「賃料差額」の特定です。
既存契約の賃料(継続賃料)
現在、契約書に基づいて支払われている賃料です。この賃料は、過去の契約時の状況や、これまでの賃料改定履歴に強く影響されます。
市場の賃料(新規賃料)
もし今、新たに第三者に賃貸するとしたら、いくらで契約されるかという市場相場です。これは、新規賃料の賃貸事例(募集事例)を基に算出されます。
不動産鑑定士は、この二つを比較し、差額の発生を数値で明確にします。もし継続賃料が新規賃料より著しく低ければ、賃料増額の根拠として「市場との乖離」を強く主張できます。
テナントにも視覚的に伝わりやすいので、十分な根拠の一つとなります!
2. 鑑定評価額に直結するコスト要因の分析(積算法の根拠)
賃料増額の説得力を最も高めるのが、オーナー様のコスト増加を数値で証明することです。
私たちは、賃料のコスト的な根拠となる積算法のために、以下の二つの主要なコスト要因を詳細に調べます。
土地価格の適正性の確認
賃貸物件の収益性を評価する上で、土地価格は非常に重要な要素です。近年、福岡都市圏では土地価格の上昇が顕著であり、この上昇は賃料に反映されるべきです。
私たちは、その地域の最新の地価公示や取引事例を調査し、物件の敷地の土地価格が現在いくらであるかを適正に評価します。この土地価格の上昇が、賃料増額の確固たる根拠となります。
建物価格の上昇率と必要経費の確認
建物を建て直すとしたら費用はいくらかかるかという「再調達原価」を把握することで、建物価格の市場における価値を評価します。
建築資材の高騰が続く現在、建物価格は上昇傾向にあり、これも賃料に反映されるべき要素です。
さらに、固定資産税課税明細などをチェックし、賃貸経営に必要な固定資産税や修繕費、管理費などの必要諸経費がどれだけ増えているかを計算に組み込みます。
これらのコストを基に賃料を算定することで、感情論ではない、客観的な増額の根拠を提供できます。
3. 周りの賃貸事例(募集事例)の調査
市場の家賃相場(新規賃料)を把握するため、私たちはポータルサイト等に掲載されている新規賃料の賃貸事例(募集事例)を調べます。
しかし、単に募集価格を見るだけでは不十分です。私たちは、その募集事例が成約に至ったか、成約した際の賃料はいくらだったか、そしてその事例と対象物件の「個別性」を比較し、適切に補正を加えます。
- 物件の個別性:階数、向き、築年数、設備、管理状況など、賃料に影響を与えるあらゆる要因を数値化し、周辺相場との比較を正確に行います。
この緻密な比較・補正作業こそが、単なる不動産仲介業者の相場情報とは一線を画す、説得力のある鑑定評価の核となります。
4. これまでの賃料改定履歴と交渉の背景
現在の賃料がなぜその水準に落ち着いているのかを知るため、私たちはこれまでの賃料改定履歴を詳細にヒアリングします。
- 過去に賃料が据え置かれた経緯はないか?
- オーナー様側の要望で増額を諦めたことはないか?
- テナント側から減額請求があったことはないか?
過去の賃料交渉の経緯を把握することで、「現在の賃料は、市場の適正価格ではなく、過去の交渉の結果として低く抑えられてきた継続賃料である」というストーリーを組み立てる根拠とします。
このストーリーがあることで、交渉はより有利に進みます。
5. オーナーの負担増を証明する固定資産税の上昇履歴
賃料増額の根拠として、オーナー様の「支出の増加」を証明することは極めて重要です。その最も客観的な証拠が、固定資産税の上昇履歴です。
私たちは、過去数年分の固定資産税課税明細などを調査し、税負担の増加を数値で把握します。
- 賃料への反映:積算法では、この税金が「必要経費」として直接計算されます。固定資産税の上昇履歴を賃料増額の根拠とすることで、感情論ではない、公的な数値に基づいた説得力を確保できます。
まとめ:賃料差額の調査こそが交渉の鍵
私たち鑑定士は、単に「いくらが適正か」という答えを出すだけでなく、「なぜその金額が適正なのか」という論理的で説得力のある根拠を提供することが仕事です。
賃料差額の特定と、それを生み出した土地価格の上昇、新規賃料の賃貸事例、そしてこれまでの賃料改定履歴の分析—この5点が、賃料改定交渉を成功に導くための交渉材料となります。
ご自身の不動産の賃料が適正なのか、改定の余地があるのかどうかご不明な場合は、ぜひ当「地代・家賃の鑑定相談室」までお気軽にご相談ください。
皆様の地代・家賃の悩みを解決し、収益改善をサポートいたします。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
地代・家賃の鑑定相談室
不動産鑑定士(第10401号)
上銘 隆佑
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