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継続賃料評価の判断枠組み│賃料増減請求権の本質と相当な賃料の決定プロセス

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【執筆・監修】
地代・家賃の鑑定相談室
不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

今回は、私が作成した勉強会資料「継続賃料評価_賃料増額請求権と相当な賃料」をもとに、賃料改定という少し難しいけれど避けては通れないテーマについて、不動産鑑定士の視点から解説します。

目次

継続賃料評価の判断枠組み:賃料増減請求権の本質と相当な賃料の決定プロセス

こんにちは、不動産鑑定士の上銘隆佑(じょうめい)です。

私は現在34歳で、出身は千葉県船橋市ですが、福岡で暮らして7年目になります。

大学では建築学を専攻し、軍艦島のコンクリート研究などをしていました。

社会人となってからは、大和不動産鑑定での勤務や三菱地所投資顧問への出向を経て、2024年5月に福岡で上銘不動産鑑定士事務所を開設しました。

少し理論的な内容ですが、賃料改定の重要な根拠の部分となります!

賃料改定の法的根拠と増減請求権のパワー

家賃や地代の改定を考える際、まずベースになるのは借地借家法です。

この法律の第11条1項(地代)や第32条1項(建物賃料)では、今の賃料が不相当になった場合に増減を請求できる権利が認められています。

請求が認められる主な要件は3つあります。

一つ目は、土地や建物に対する税金などの公租公課が変わったとき、二つ目は、土地や建物の価格変動やその他の経済事情が変わったとき、三つ目は、近隣の似たような物件の賃料と比較して不相当になったときです。

この「賃料増減請求権」は、法律用語で「形成権」かつ「強行法規」と呼ばれます。

形成権というのは、一方的な意思表示によって、客観的に見て相当な賃料に改定されるという強力な性質を指します。

また、強行法規ですので、たとえ契約書でこの権利を排除する特約を結んでいたとしても、基本的には無効となります。

ただし、貸主側が一定期間は賃料を上げないという「不増額特約」を結んでいる場合は、その約束が優先されます。

継続賃料は現行賃料の歴史を尊重する

皆さんがネットで目にする周辺相場は、いわゆる「新規賃料」です。

これは、新しい入居者と真っ白な状態で結ぶ契約の賃料です。しかし、すでに契約が続いている場合の「継続賃料」の評価は、それとは全く異なる考え方をします。

鑑定評価基準では、継続賃料は「現行賃料を前提として」決定するものとされています。

つまり、今の賃料がどのような経緯で決まったのか、前回の合意からどのような社会的な変化があったのか、そして何より貸主と借主の間の公平性が保たれているかを、総合的に判断するのです。

たとえるなら、新規賃料は「今の流行りで服を新調すること」ですが、継続賃料は「長年愛用してきた服を、今の体型や時代の空気に合わせて、お互い納得できる範囲で仕立て直すこと」に似ています。

評価の基準点となる「直近合意時点」の重要性

継続賃料を評価する上で、私が最も時間をかけて精査するのが「直近合意時点」です。

これは、今の賃料を最後に現実的に合意した時点を指します。

なぜこれが重要かというと、直近合意時点よりも前に起きた経済事情の変化などは、今回の改定の理由(事情変更)として考慮できないからです。

いつをスタートラインにするかによって、評価額が大きく左右されるため、実務上も非常によく争われます。

直近合意時点の判定には注意が必要です。

例えば、賃料自動改定特約によって自動的に金額が変わった時点や、単なる法定更新が行われた時点は、原則として直近合意時点とは認められません。

一方で、賃料額を据え置く場合であっても、経済事情を踏まえて実質的な交渉が行われていれば、そこが現実の合意があった時点とみなされることがあります。

賃料を動かす「事情変更」と「諸般の事情」

鑑定士は、直近合意時点から現在(価格時点)までの間に起きた要因を二つのグループに分けて分析します。

一つ目は「事情変更に係る要因」です。これは物価変動、所得水準の変化、地価や建築費の推移、税金の増減といったマクロな経済情勢のことです。

また、親族関係などの特殊な事情が消滅したといった事情もここに含まれます。

二つ目は「諸般の事情に係る要因」です。これは契約そのものの背景にある事情です。

例えば、借主が地域の発展に大きく貢献していることや、建替協力のために一時的に安く設定されていた経緯などが該当します。

これまでの歴史がどうだったかを丁寧に紐解く作業が必要です。

適正な賃料を導き出す4つの鑑定手法

これらを踏まえて、具体的な数字を出すために主に4つの手法を使います。

  1. 差額配分法:今の相場と現行賃料の「差」を、貸主と借主でどう分けるか決める手法です。
  2. 利回り法:土地や建物の価値に、期待利回りを乗じて計算する手法です。
  3. スライド法:物価指数などの変動率を使って、今の賃料をスライドさせる手法です。
  4. 賃貸事例比較法:似たような「契約継続」の事例と比べる手法ですが、データが少ないため実務では参考程度になることが多いです。

これらで出た数字(試算賃料)を、それぞれの信頼性やケースに合わせて「重みづけ」し、最終的なひとつの答えを出します。

まとめ:公平の原則に基づいた解決を目指して

継続賃料の評価において、最も大切にされるのが「公平の原則」です。

継続賃料は、原則として「現行賃料」と「新規賃料(市場相場)」の間で決定されるのが実務上の指針となっています。

貸主にとっては大切な資産の果実であり、借主にとっては事業や生活の拠点となる賃料です。

お互いの権利がぶつかる場面だからこそ、鑑定士という第三者が、法律とデータに基づいた客観的な「物差し」を示すことが重要になります。

もし、家賃の改定でお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

今の賃料が適正なのか、あるいはどのような根拠で交渉を進めるべきなのか、無料相談から解決策を考えていきましょう。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。

地代・家賃の鑑定相談室
不動産鑑定士(第10401号)
上銘 隆佑
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