こんにちは。福岡で不動産鑑定士をしている上銘(じょうめい)です。

福岡の街を歩いていると、新しいマンションやビルの建設ラッシュに驚かされます。
不動産投資家やオーナー様の間では「福岡の家賃はどこまで上がるのか?」という話題で持ちきりですが、その実態を数字で捉えるのはなかなか難しいものです。
そんな中、福岡特化型リートである「福岡リート投資法人」から、興味深いデータが発表されました。最新の第42期決算資料(2025年8月期)です。
そこには、福岡市内の賃貸経営で起きている「賃料格差」がはっきりと記されていました。
キーワードは「入替賃料」と「更新賃料」の差です。
不動産鑑定士の視点から、この「入替時+17.9%」という数字のインパクトと、そこから見える福岡の家賃高騰、そして私たちが取るべき戦略について詳しく解説していきたいと思います。
入替+17.9% vs 改定+7.0%。数字が語る「格差」
まず、福岡リートの資料(内部成長戦略の住居セクション)から、実績値を見てみましょう。
今回の決算期において、保有するレジデンス(住宅)の賃料がどれくらい上がったかを示す数字です。
・入替時の賃料変動率:+17.9%

・更新(改定)時の賃料変動率:+7.0%

いかがでしょうか。リアルなデータですね・・!
「入替」とは、前の入居者が退去して新しい入居者を募集した際の上昇率。「更新」とは、今住んでいる人に契約更新のタイミングで交渉して上げてもらった上昇率です。
どちらもプラスなのは福岡のマーケットが強い証拠ですが、その差は2.5倍以上。
特に入替時の「17.9%アップ」というのは、家賃10万円だった部屋が、次の人には11万7,900円で貸せているという計算になります。
不動産鑑定士として多くの案件を見てきましたが、これほど極端な賃料上昇は、数年前の福岡では考えられませんでした。
なぜ「入替」でこれほどまで家賃が跳ね上がるのか?
なぜ、これほどの格差が生まれるのでしょうか。
そこには「募集賃料(新規賃料)」と「継続賃料」という、不動産鑑定の現場でも非常に重要視される考え方が関係しています。
いま、福岡市内の募集賃料(新たに募集する時の家賃)は、「急上昇」といっていい状態です。
天神ビッグバンや博多コネクティッドによる雇用創出で、県外からの流入が続き、部屋が足りていません。
しかし、一度住み始めた人の家賃(継続賃料)は、日本の借地借家法という法律や心理的なハードルもあり、一気に2割も上げることは現実的に不可能です。
福岡リートが「+7.0%」の更新値上げを成功させていること自体、プロとして凄まじい交渉力ですが、それでもマーケットの急騰スピードには追いついていないんです。
つまり、今の福岡では「入居者が入れ替わる瞬間」こそが、溜まっていた賃料ギャップを一気に解消し、物件の収益性をマーケット水準まで引き上げる最大のチャンスになっているわけです。
「長く住んでもらうのが一番」という常識が変わる?
これまで賃貸経営の世界では、「空室期間(ダウンタイム)が一番の損失。だから長く住んでもらうのが善」とされてきました。
もちろん、これは今でも一つの真理です。
しかし、今回のような「入替時に+17.9%も上がる」というデータを見ると、少し考え方を変える必要があります。
仮に、家賃10万円の部屋で入居者が入れ替わり、次の人が11万8,000円で入ってくれたとします。
年間の家賃増額分は21万6,000円。
もし、入替に伴う空室期間や募集費用(広告料など)に30万円かかったとしても、1年半もあればそのコストを回収し、2年目以降は年間20万円以上の純増となります。
「退去が出ることを恐れる」のではなく、「退去を収益向上のきっかけと捉える」。
このマインドセットの転換ができるかどうかが、今の福岡で勝ち残るオーナーの条件かもしれません。
不動産鑑定士の視点:17.9%の増額がもたらす資産価値の爆上がり
さて、ここからが不動産鑑定士としての本領発揮です。
家賃が約18%上がるということは、皆さんの物件の「時価(資産価値)」にどれほどの影響を与えると思いますか?
不動産の評価額(収益価格)は、ざっくり言うと「年間収益 ÷ 還元利回り(キャップレート)」で計算されます。
仮に、年間1,000万円の収益を生んでいたマンションが、入替を繰り返してポートフォリオ全体で15%の増益に成功したとします。
・改定前:1,000万円 ÷ 5.0% = 2億円
・改定後:1,150万円 ÷ 5.0% = 2億3,000万円
なんと、家賃を上げただけで物件の価値が3,000万円も上昇したことになります。
これ、銀行から融資を受ける際や、将来物件を売却する際、とてつもないアドバンテージになりますよね。
「募集賃料を攻める」ということは、単に毎月のキャッシュフローを増やすだけでなく、自分の純資産を数千万円単位で増やせる作戦でもあります。
福岡の「家賃高騰」はいつまで続くのか?
皆さんが気になるのは「この+17.9%という急上昇は、いつまで続くの?」という点。
福岡リートの資料の後半(Appendix)を見ると、そのヒントが載っています。
天神・博多周辺では、今後数年にわたって大規模なオフィスビルの竣工が続きます。
そこで働く人たちの数は数万人規模と言われており、しかもその多くは大手企業の高所得者層です。
彼らは「安さ」よりも「クオリティや立地」を重視します。
つまり、今の福岡は「需要が供給を上回り続けている」状態にあり、募集賃料が下がる要因が今のところ見当たりません。
特にハイグレードな物件、福岡リートでいえば「アクシオン大手門プレミアム」などは選ばれる物件となると考えています。

不動産鑑定士として地価動向を見ていても、この傾向はまだ数年は継続すると予測しています。
結論:福岡の「募集賃料」をアップデートしなければ!
今回の福岡リートの実例から学べる点はシンプルです。
- 「入替」は好機である
- 退去が出たとき、数年前と同じ条件で募集していませんか? それは、+17.9%の収益チャンスを捨てているのと同じかもしれません。
- 更新時も「+7.0%」は狙える
- 「値上げを言うと退去される」と怖がる必要はなく、まずはマーケットの強さを知ること。プロであるリートは+7%の合意を得ています。しっかりとした根拠(周辺相場のデータ)を提示すれば、交渉の余地はあります。
- 長期入居も一長一短。利回りで判断する。
- 不動産経営において、感情は時に判断を狂わせます。「ずっと住んでくれているから安いままでいい」というのも一つの経営判断ですが、もし将来の売却や大規模修繕を考えているなら、数字(利回り)を優先すべき局面もあります。
不動産鑑定士としては「数字は街の体温を表している」と考えています。
入替+17.9%。この数字は福岡という街が持つポテンシャルを表しているなと思います。
皆さんの物件でも、ぜひ一度「いま募集したらいくらになるか?」を検討してみてはいかがでしょうか。
福岡リートのようなプロの視点を取り入れることで、皆さんの不動産経営はもっと面白く、もっと価値あるものになるはずです。
もし、自分の物件の「適切な募集賃料」や「資産価値の伸び代」が気になったら、いつでもご相談ください。不動産鑑定士ならではの客観的なデータで、賃貸経営をサポートします。
上銘不動産鑑定士事務所
不動産鑑定士 上銘
あとがき
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は福岡リートの資料から「入替と改定の差」という、実務に直結するトピックを書いてみました。
資料には他にも、ホテルや商業施設の回復状況など、面白いデータがたくさん眠っています。

これからも、不動産鑑定士の等身大な視点で、皆さんの投資判断に役立つ情報を翻訳してお伝えしていきます。定期的にチェックしていただけると嬉しいです!
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
この記事の執筆者

地代・家賃の鑑定相談室
不動産鑑定士 上銘 隆佑
Ryusuke Joumei
「地代・家賃の鑑定相談室」運営。上銘不動産鑑定士事務所代表。
大和不動産鑑定株式会社東京本社に入社し、2019年に不動産鑑定士登録(第10401号)。国内系不動産アセットマネジメント会社への出向を経て、大和不動産鑑定株式会社九州支社へ赴任。
適正家賃、関係者間売買、証券化対象不動産、銀行の担保不動産、公有地の売買に係る不動産鑑定評価を中心に、不動産鑑定評価に携わる。
不動産鑑定業 福岡県知事 第(1)-347号
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