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競合物件との比較で求める比準家賃│「賃貸事例比較法」をやってみる

目次

なぜ「競合物件との比較」が大事?

こんにちは、不動産鑑定士の上銘です。

ステッカー作りました!

不動産オーナーが「住宅」の家賃を決める際、既にある周りの家賃相場をみなさん調べると思います。

「あのシャーメゾンがいくらだから、うちは3000円下げて募集かな」という感じ。

これを不動産鑑定に取り入れたのが「賃貸事例比較法」です。難しそうな言葉ですが、やっていることはとても分かりやすくて、私自身好きな手法です。

この手法は、実際の賃貸事例をSUUMOやホームズで集めて、競合物件との比較で適正家賃を決めていきます。

今回は、この賃貸事例比較法を簡単に使えるように書いていきます。

私の受任案件でもこの手法はほぼ全てで使っていますので、実務の観点も入れていきたいと思います。

賃貸事例比較法を簡単に。周りの「成約事例」から適正家賃を導く


賃貸事例比較法は、類似の不動産の「成約事例」を収集し、その事例の家賃水準を参考に、対象物件の適正な家賃を求める手法です。

簡単に言えば、「立地やスペックを比べる」イメージ。

実際の式はこのようになっています。

説得力が高いポイント

  • 市場性を重視した判断ができる
    実際に市場で決まった家賃を基にするため、非常に説得力のある家賃を設定できます。マンションやアパートであれば、SUUMOやホームズで簡単に事例が調査できるのも便利です!
  • 客観的な根拠を示せる
    賃料増減額交渉の際に、「近隣の類似事例と比較して、この家賃は妥当だ」という客観的な根拠を示すことができます。

説得力が劣る場合

  • 設備が超ハイグレードなど、個性が強い物件
    周りに似た物件が無い場合、格差の判定が難しく、説得力が劣ってしまいます。ガレージ付、幹太くん付、天井高3m超など、魅力だけど希少すぎて事例が限られます。
  • 福岡市中央区天神など、地域一番の物件
    福岡市内で一番の物件だと、賃料水準は青天井になります。実質的には、大阪や東京23区の物件との比較で家賃が決まりそうですが、あくまで参考程度。非常に判断に困ります。

ステップ①家賃を比較する「競合物件」の成約事例を収集する

まずは、対象物件と類似性の高い「競合物件」の成約事例をできるだけ多く集めることが重要です。

ちなみに鑑定評価では同一需給圏と呼びます。

SUUMOより抜粋

事例集めでは、以下の点を意識して探しましょう。

  1. 物件の条件を絞り込む
    • エリア:対象物件と同じ行政区画内、または同じ生活圏・商圏内にある物件を探します。
    • 用途:オフィス、店舗、居住用といった用途が同じ物件を探します。
    • 間取り・広さ:同じ間取り(例えば1LDKや事務所)で、広さが近い物件を探します。
  2. 情報源を複数活用する
    • 不動産データベース:業界関係者向けのデータベースサービスを活用します(SUUMO、ホームズ等)。
    • 不動産会社のネットワーク:信頼できる不動産会社から、実際の成約事例の情報を得るのが最も確実です。
    • レインズ:不動産流通機構が運営するデータベースで、成約事例を調べることができます。

単に「募集賃料」だけを見るのではなく、過去1年以内の「成約事例」を集めることが、精度の高い家賃査定の第一歩です。

ステップ②「類似性」を細かく分析する5つのチェックポイント

複数の成約事例を集めたら、次は事例と自分の物件との「違い」を細かく分析し、家賃の妥当性を判断していきます。

ここでは、特に重要な5つのチェックポイントについて解説します。

1. 時点修正:成約時期による市場の変動を考慮する

家賃相場は常に変動しています。この1年で大分相場が動いています。

物価や金利、地域の需要変動などを考慮して、過去の事例を現在の価値に修正することを「時点修正」と呼びます。

例えば、1年前に成約した事例の家賃が月額15万円だったとします。

この1年で家賃相場が+10%上昇していると判断した場合、その事例の現在の価値は「15万円 × 1.1 = 16.5万円」として修正します。

2. 広さ:面積あたりの単価で比較する

同じ「30㎡」の物件でも、事例によって広さが微妙に異なることがあります。

単純な家賃の金額だけでなく、広さあたりの家賃単価(例えば、坪単価や平米単価)を計算することで、より正確な比較ができます。

  • 事例A:広さ80㎡、家賃15万円 → 坪単価6,198円
  • 事例B:広さ70㎡、家賃13万円 → 坪単価6,139円

このように単価で比較することで、自分の物件の広さが、家賃にどのように影響しているかを客観的に判断できます。

3. 築年数:古くても価値がある?

築年数は家賃を左右する大きな要因ですが、これも単に「古いから安い」というわけではありません。

  • 新築・築浅:築年数が浅い物件は人気が高いため、家賃は相場より高めになります。
  • リノベーションの有無:古い物件でも、内装や設備が一新されていれば、築年数のデメリットを補い、家賃相場を上回ることもあります。
  • 耐震性:古い物件でも、新耐震基準を満たしているかどうかも重要な判断材料です。

4. 駅距離:徒歩1分が家賃に与える影響

駅距離は利便性に直結するため、家賃に与える影響は非常に大きいです。

  • 駅チカ物件:駅徒歩5分圏内の物件は、相場より高い家賃が設定されやすいです。
  • 駅からの距離補正:事例Aが駅徒歩5分、自分の物件が徒歩10分なら、「徒歩5分遠い分、家賃をいくら下げるべきか」を考えます。一般的に、徒歩1分あたり1%~5%程度の差が出ることが多いです。

5. 建物品等:設備やグレードの差を補正する

最後に、建物や部屋の「建物品等」の違いを比較します。

  • 設備:オートロック、エレベーターの有無、OAフロアなど。居室なら浴室乾燥機、独立洗面台の有無など、人気の設備が充実しているか。
  • グレード:共用部の雰囲気、管理状況、階数、部屋の向き(南向き・北向き)など、個別の条件を比較します。

以上を、家賃に補正をかけて、自分の物件の適正家賃を導き出します。

SUUMOより抜粋

今回は簡単に、

  1. 1年で上がった家賃相場分 +3%(時点修正)
  2. 事例は駅距離が近くて◎ +10%(地域要因)
  3. 事例は設備水準が劣る(食洗器なし等) ▲10%(品等格差)

と格差付けしました。

すると、事例では月150,000円だったものが、本物件は156,000円が適正と計算できました。

少し省略していますが、実務上も同じ流れで査定しています。

まとめ:賃貸事例比較法は、事例収集が命

「賃貸事例比較法」、なんとなく伝わりましたでしょうか。

評価書サンプル

成約事例を収集し、広さ、築年数、駅距離、建物品等といった要素を分析し、時点修正をかけて比較することで、説得力のある家賃水準が計算できます。

特に住宅であれば、賃貸事例がネットで検索できるので、簡単におおよその水準感は掴めます。

ぜひ一度計算してみてください!

お読みいただき、ありがとうございました。


今後は、適正家賃に焦点を当てた「”適正家賃”を考えるnote」を本格化していきたいと思います。

非常にニッチですが、受任案件を振り返るとお悩みは深刻ですし、不動産鑑定士として必ず役に立てる分野と考えています。

活動内容イメージ↓

  • 適正家賃の受任事例
  • 適正家賃を自分で計算してみよう講座
  • 上場REITの賃料アップ事例集
    などを考えています。

福岡の方が増えたら、対面相談会適正家賃を計算してみよう講座も会場を借りてやっていきたいな、と。

今後も、「福岡の不動産鑑定士」をよろしくお願いします。ありがとうございました!

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上銘不動産鑑定士事務所 – 福岡都市圏、九州各県の評価実績あり。

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