

こんにちは、不動産鑑定士の上銘です。
本日は「賃料の遅行性」について書いていきます。
昨今の地価上昇に伴い、家賃も徐々に上昇が続いています。
昨今の地価上昇を肌で感じ、オーナーさんや投資家さんから「これだけ地価が上がっているのだから、家賃をもっと上げられるのではないか?」というご相談をいただく機会が増えました。
非常に鋭いご指摘ですが、実は地価と家賃には、不動産鑑定の世界で「賃料の遅行性(ちこうせい)」と呼ばれる重要な関係性があります。
地価が上がったからといって、家賃が翌月から連動して跳ね上がるわけではないのです。
なぜこのようなタイムラグが生じるのか、専門的な視点から解説します。
1. 地価は将来の期待を織り込むが、賃料は現在を重視
地価と賃料の決定的な違いは、その価格が「何を反映しているか」という点にあります。
- 地価: 将来の期待が反映されます。再開発計画や数年後の需要を見込んで市場が動くため、先取りして上昇しやすい性質があります。
- 賃料: 「今の使用収益の価値」が反映されます。実際にその場所を使っていくら収益が得られるかという現在の実態に基づくため、特に将来的な地価の変化は考慮されづらいです。
このため、地価が上昇トレンドに入っても、賃料が実際に追いつくまでにはタイムラグが生じます。
2. 鑑定実務における「遅行性」の考え方
国土交通省の「継続賃料にかかる鑑定評価の方法等の検討」では、この性質について以下のように指摘されています。
継続賃料は一般的に遅行性を有しているため正常賃料とは乖離している傾向があり、現行賃料が正常賃料と乖離していたとしても、既に賃料改定が行われている場合には、この乖離は賃料特有の遅行性が要因であることにより、賃料を改定することの相当性が認められない可能性もあることから、実際支払賃料の改定に当たっては、対象不動産に係る賃料改定の経緯及びその改定の程度を把握することが重要である。
つまり、家賃が相場より安く見えても、それは「単に遅行性によって調整が遅れているだけ」という場合もあれば、「過去の改定ですでに適正な範囲に調整されている」という場合もあります。
値上げを検討する際は、「過去にどのような経緯で賃料が改定されてきたか」という過去の背景を分析しなければ、値上げの正当性を証明することはできません。
3. なぜ賃料は上がりにくいのか?(遅行性・粘着性の壁)
賃料には「粘着性(ねんちゃくせい)」という特徴があります。
- 契約期間の存在: 賃貸借契約は通常数年単位であり、その期間中は簡単に賃料を変更できません。
- 法律による借主保護: 日本の借地借家法は借主の権利を強く守っています。地価が上がったという大家さん側の事情だけで、納得できない借主に対して強引に値上げを要求することは、実務上簡単ではなく、弁護士さんの力も必要になります。
法律の壁があるため、賃料は遅行し、かつ粘着性を持つと指摘されています。
専門家としての考え│地価上昇は賃料改定の強い材料にはなる
地価が上がると、固定資産税の負担増となります。
もし現在、周辺家賃相場や固定資産税の負担増に基づいた賃料見直しを検討されているのであれば、「近傍同種の家賃相場」や「経済的事情の変動」といった法的に認められる根拠に基づいた適正賃料の算定が必要です。
「周辺相場と比べてどうなのか?」「今の家賃は適正なのか?」という疑問をお持ちの方は、お気軽に不動産鑑定士事務所までご相談ください。
最新の市場データに基づき、冷静かつ客観的な評価をご提供いたします。
上銘不動産鑑定士事務所 地代・家賃の鑑定相談室運営
不動産鑑定を専門としており、適正賃料の算定から賃料交渉のサポートまで、多くの実績がございます。お気軽にお声がけください。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
この記事の執筆者

地代・家賃の鑑定相談室
不動産鑑定士 上銘 隆佑
Ryusuke Joumei
「地代・家賃の鑑定相談室」運営。上銘不動産鑑定士事務所代表。
大和不動産鑑定株式会社東京本社に入社し、2019年に不動産鑑定士登録(第10401号)。国内系不動産アセットマネジメント会社への出向を経て、大和不動産鑑定株式会社九州支社へ赴任。
適正家賃、関係者間売買、証券化対象不動産、銀行の担保不動産、公有地の売買に係る不動産鑑定評価を中心に、不動産鑑定評価に携わる。
不動産鑑定業 福岡県知事 第(1)-347号
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