
賃料交渉や改定の現場において、不動産鑑定士が用いる「継続賃料」の考え方は欠かせません。
このまとめ記事では、市場の相場である「新規賃料」との違いを明確にし、客観的で説得力のある賃料改定に用いられる主要な鑑定評価手法について解説します。
家賃改定で重要になるのは、「現行家賃と新規家賃の差額」です!
目次
1. 新規賃料・現行賃料・継続賃料の違い
| 種類 | 定義 | 決定要素 |
| 新規賃料 | 新たに賃貸借契約を結ぶ際に設定する家賃。 | 積算法、賃貸事例比較法などを用いた客観的な市場価値。 |
| 現行賃料 | 現在、オーナーに支払われている家賃。 | 経済状況の変化や地価変動により、市場相場(新規賃料)と乖離することがある。 |
| 継続賃料 | 賃貸借関係が継続していることを前提に、現行賃料を改定する際に設定する家賃。 | 現行賃料を起点とし、過去の経緯や経済変動といった「諸般の事情」を考慮する。 |
新規賃料が「ゼロから市場賃料を求める」のに対し、継続賃料は「現行賃料からどれだけ調整すべきか」を考える手法です。
2. 賃料改定の鍵となる「賃料差額」
継続賃料の算定で最も重要な考え方の一つが「賃料差額」です。
これは、新規賃料と現行賃料の間に生じた金額の差を指します。
長期間の契約が続く場合、多くは市場相場(新規賃料)が現行賃料を上回る乖離が生じます。
この差額は、オーナーにとっては値上げの根拠となり、テナントにとっては長年の賃貸借関係によって得られたメリットを象徴するものです。
鑑定評価では、この差額を公正に配分することが、継続賃料を導き出す上での鍵となります。
3. 継続賃料を求める主要な3つの鑑定手法
不動産鑑定評価基準では、継続賃料を求めるために主に以下の3つの手法が用いられます。
特に差額配分法とスライド法が重視される傾向にあります。
① 差額配分法(さがくはいぶんほう)
賃料改定において最も重視されることが多い手法です。
- 仕組み: 現行賃料と新規賃料の賃料差額を求め、その差額をオーナーとテナントの貢献度(寄与度)に応じて配分し、現行賃料に加算(または減算)して継続賃料を導き出します。
- 特徴: 賃貸借の経緯や**借地借家法の趣旨(借主保護)**を考慮できるため、裁判や調停の場で特に重視されます。
② スライド法(すらいどほう)
現行賃料の変動要因を客観的に示す手法です。
- 仕組み: 現行賃料に、契約締結時からの物価変動率、土地建物価格の変動率、経済情勢の変化などを加味して賃料を調整します。
- 算定式: スライド法による賃料 = 純賃料 × (1 + 変動率)+必要諸経費等
- 特徴: 固定資産税の上昇など、特定の費用変動を根拠とした賃料増額交渉に特に有用です。
③ 利回り法(りまわりほう)
積算法の考え方を継続賃料に応用した手法です。
- 仕組み: 不動産の基礎価格に、継続賃料を求めるための特別な「継続賃料利回り」を乗じ、これに必要諸経費等を加算して賃料を算出します。
- 特徴: 物件の収益性や費用性を基に賃料を考えるため、元本価格の変動を反映しやすい。
参考記事一覧と室長の視点
室長の視点
賃料の改定は当事者間で意見の食い違いが起きやすい部分です。
不動産鑑定士としては、「客観的かつ公正な継続賃料」を丁寧に計算することが実務で求められているということを日々実感しています。
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地代・家賃の鑑定相談室
不動産鑑定士(第10401号)
上銘 隆佑
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