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【解説】差額配分法と利回り法│市場相場との乖離の配分および投資利回りに着目した手法

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【執筆・監修】
地代・家賃の鑑定相談室
不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

差額配分法と利回り法:市場相場との乖離の配分および投資利回りに着目した手法

こんにちは、不動産鑑定士の上銘(じょうめい)です。

福岡で上銘不動産鑑定士事務所を営んでおります。

現在34歳で、千葉県船橋市の出身ですが、福岡に移住して7年目になります。大学では建築学を専攻し、軍艦島のコンクリートを研究するという少し変わった経歴を持っています。大手鑑定会社や不動産投資顧問会社での経験を経て、2024年5月に独立いたしました。

今回は、継続賃料(いま借りている家賃の改定)を査定する際にプロが使う、4つの主要な鑑定評価手法のうち、特に重要で説得力の高い「差額配分法」と「利回り法」について、じっくりとお話ししていきます。

家賃改定の現場では「今の相場はこれくらいだから、そこまで上げて(下げて)当然だ」という主張をよく耳にします。

しかし、継続賃料の世界はそれほど単純ではありません。これまでの契約の歴史や、貸主・借主の公平性をどうバランスさせるかが鍵となります。

差額配分法:市場相場とのギャップを公平に分け合う

差額配分法は、一言で言えば「今の家賃と、今から新しく借りる場合の相場(正常賃料)との間にどれくらいの差があるか」に着目し、その差額を貸主と借主でどう分け合うかを決める手法です。

この手法の最大の魅力は、実際の賃料交渉プロセスに非常に近いという点です。

皆さんも「相場は10万円だけど今は8万円だから、間をとって9万円にしませんか?」という話をすることがあると思いますが、まさにその論理を専門的に裏付けるのがこの手法です。

計算式をシンプルにすると以下のようになります。

計算式: (正常賃料 - 現行賃料) × 貸主に帰属する割合 + 現行賃料

ここでポイントになるのが、この「分け合う割合」をどう決めるかです。

多くの裁判例では、経済事情の変動などは当事者にとって中立であるという考えから、原則として「2分の1(1/2)」、いわゆる「2分の1法」が採用されます。

しかし、鑑定士はそこからさらに踏み込みます。

例えば、以下のようなケースでは割合を調整することがあります。

  • 借主が地域発展に大きく貢献している、あるいはキーテナントとしてビルの集客を支えている場合は、借主の配分を増やして「1/3」などにすることもあります。
  • 逆に、もともと親族関係などで極端に安くしていた「恩恵的な関係」が解消された場合や、20年以上も家賃を据え置いていたような場合は、貸主の配分を重くして「2/3」や「7/10」に設定することもあります。

差額配分法は、不均衡を是正する力が強いため、実務や裁判でも非常に重視される「エース級」の手法と言えるでしょう。

利回り法:資産価値という「元本」と賃料という「果実」の関係

次に解説するのが「利回り法」です。

これは不動産を一つの投資対象として捉え、その価値に対してどれくらいの「利益(果実)」を上げているかに着目します。

考え方としては、土地や建物の価格(基礎価格)に、継続賃料を求めるための適切な利回りを掛け、そこに固定資産税などの必要経費をプラスして算出します。

計算式:基礎価格 × 継続賃料利回り + 必要諸経費等

この手法の大きなメリットは、地価の変動をダイレクトに賃料に反映できる点にあります。

元本(価格)が上がれば、それに見合う果実(賃料)も上がるべきだという論理的な説明が可能です。

ただし、注意点もあります。

実は、実際の賃貸借契約で「この利回りだからこの家賃にしましょう」と合意しているケースはそれほど多くありません。

そのため、人によっては「なんだか理屈っぽいな」と感じられ、説明の説得力という面では少し劣る場合があります。

また、最近のように地価が急激に上昇している地域では、利回り法だけで計算すると、他の手法で出した賃料よりも極端に高い数字が出てしまうことがあります。

地価の変動と賃料の変動は、必ずしもパラレル(平行)に動くわけではないからです。

そのため実務上は、主要な手法を補完する「参考」として扱われる場面も少なくありません。

鑑定士はどうやって「最終的な答え」を決めるのか

ここまで差額配分法と利回り法の話をしましたが、他にも「スライド法」や「賃貸事例比較法」といった手法を組み合わせて、通常は4つの数字(試算賃料)を並べます。

最後に鑑定士が行うのが「試算賃料の調整」という最も頭を使う作業です。

4つの手法で出た答えを単純に平均するのではなく、その事案においてどの手法が最も説得力があるかを判断して「重みづけ(ウエイト付け)」をします。

例えば、以下のように判断を振り分けます。

  • これまでの恩恵的関係がなくなったことが最大の理由であれば、差額配分法を重視します。
  • 前回の合意からまだ2〜3年しか経っていないなど期間が短い場合は、物価スライド(スライド法)を重視することがあります。
  • 地価の変動が極端すぎて、他の手法とあまりに乖離している場合は、利回り法のウエイトを下げて調整します。

こうして、過去の契約の経緯や現在の市場環境、そして当事者間の公平性というすべての要素をパズルのように組み合わせて、最終的な鑑定評価額を決定するのです。

適正な賃料改定がもたらすメリット

家賃改定は、貸主と借主の利益がぶつかる繊細な問題です。

だからこそ、こうした「差額配分法」や「利回り法」といった客観的な物差しを使って話し合うことが、トラブルを防ぐ一番の近道になります。

プロが作成する鑑定書は、単に数字を出すだけではありません。

なぜその数字になるのか、裁判例や市場データを駆使して、誰が読んでも「なるほど」と思える根拠を示します。

これが、交渉を円滑に進めるための大きな力になります。

もし皆さんが「今の家賃は相場とずれている気がするけれど、どう切り出せばいいかわからない」と悩まれていたら、ぜひ一度ご相談ください。

地元の福岡はもちろん、全国のケースに対応しております。皆様の不動産経営が、より健全で納得感のあるものになるよう、精一杯サポートさせていただきます。

本日は最後までお読みいただき、ありがとうございました。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。

地代・家賃の鑑定相談室
不動産鑑定士(第10401号)
上銘 隆佑
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